<設計編-5> 製作面でクリアすべき条件を整理する

木工好きには不安と魅力が入り交じる絶好のチャレンジ

私の木工趣味は、ホームセンターで入手しやすく価格もリーズナブルな2x4材や合板などを用いたものがメインで、1から図面を起こして製作しています。代表作的なものは整地と束石の基礎から作業した東屋風の自転車置き場(4台分)です。作業時に必要な集じん機や丸鋸ガイド、丸のこテーブルソーなども製作しました。

 

しかし今回製作にチャレンジするコックピットは木ネジやボルト結合をほとんど用いずに剛性とポジション調整機能を両立させる構造で、しかも見た目の美しさまで兼ね備えるとなると、これまでの木工作品を超える難しさです。

ですが、自分の知識経験の全てを出し切って限界を超えるような難題に取り組むのは、木工好きとしての挑戦心が刺激されてワクワクします。

そんなわけで、いよいよ自作に踏み切ることを前提にして、構想実現のためにクリアすべき具体的条件のチェックを行います。

 

 

作業スペースと期間の条件

木工作業の環境要素としては、作業音や木くず・粉塵が家族や近所の迷惑とならない作業場所が必要です。

コックピット製作の場合、作業の安全性や効率を考えると、作業テーブルが設置できるなるべく広めのスペースがほしいところ。作業テーブルがあると、天板に木材をクランプで固定でき、無理のない姿勢で精度の高い作業が可能になります。

 

切り屑や粉塵に関する条件

大量の切り屑や粉塵が出る木材のカットやヤスリがけは屋外で行うようにしますが、ドリルで穴を開けたりするのは室内作業になります。

部屋の床に散らばる切り屑対策としては、作業の手元にコードレスクリーナーを常駐させ、切り屑が出る度にマメに掃除を行います。

また、粉塵に関しては集塵機代わりとしてコンパクトな空気清浄機を使用します。

この対策によって粉塵の拡散がほとんど防げます。

   

(Tips: 作業で生じた直後の粉塵なら、この空気清浄機に吸い込ませることで室内への拡散を防ぐことが可能です。 空気清浄機フィルターの目詰まりを防ぐためにはレンジ換気扇用の不織布フィルターがジャストサイズで、本体フィルターの手前に簡単に挟むことができます。不織布フィルターは使い捨てで、木の粉塵がしっかりキャッチされているのが目視で分かるほど効果的です。)

 
材料の条件

緻密で強度が高く狂いが少ない広葉樹系の木材などはとても高価ですから、現実的に考えれば価格も手頃でホームセンターで入手しやすい2x4材やベニヤ合板などを用いる以外に選択肢はありません。

2x4材はねじれや反りが生じやすく節目も多いのが難点で、僅かですがサイズのばらつきもあるなど精度の高い製作には必ずしも適していませんが、その難点をうまくカバーできればメインフレーム向きの素材です。

表面の荒れている部分は丁寧に磨いたりエポキシパテでなめらかに仕上げるなど、時間と手間を惜しまなければ木肌の美しさが引き立ち、見た目も良好になります。

(注: 2x4材は品質にバラツキが多いので、なるべく良質な素材を選びます。そのためには売れ残りばかりの時はスルーして、なるべく入荷時に近いタイミングで品定めすることが望ましいです。品定めでは安全を最優先し、慎重丁寧に材木を扱いましょう)

 

 

切断工具や計測器具の条件

精度の高い仕上がりを目指すには、正確な切断ができる道具と技術が必要です。手ノコを使う場合は補助具を使っても切断面の精度が落ちるので、要求精度の低い部分のカットに限って用いるか、あるいは切断後に正確な面出しの修正を行う必要があります。

寸法や角度の計測も精度の高い道具が必要です。安物の定規やメジャーのほとんどは狂っていて不正確です。スコヤや金尺は検定品であっても使っているうちに角度に狂いが生じてくる場合もあります。ですから計測器具に関しては狂いがないか予め確認したものを使うことが肝心です。

 
固定・接合に関する条件

精度の高い組み立てによって剛性の高い接合が可能になります。

そのため、水平が保たれた作業テーブルと、しっかり固定できるクランプ系の道具(大きなクランプは自作)が必須です。

2x4木工ではコーススレッドという木ネジを多用しますが、接着剤を併用してもコックピット製作に必要な精度・剛性の要求水準を満たせないので、より高水準なダボ継ぎで接合するようにします。

  


  



また、特に強い負荷が集中する部位には合板の2枚重ねや3枚重ねで強度と剛性を上げたものを使用します。

 

ハンコンやモニターの固定とポジション調整に関する条件

ハンコンとモニターは同一の垂直フレームに取り付ける方式が、剛性と見た目の美しさを両立できるのでぜひ実現したいと考えています。

ただし高さの調整機能のために垂直フレームにボルトを通す穴を開けることは避けます。その代わりにクランプ方式で固定すれば、垂直フレームの補強と機能美を兼ね備えることができて一石二鳥です。

画像はトグルクランプという器具ですが、これが木製コックピット成否の鍵を握る重要なアイテムになります。

 

見た目に関する条件

レーシングシムのコックピットには、無駄のない機能美でプレイヤーをワクワクさせるようなムードが漂ってほしいものです。

とはいえ、はたして木材というマテリアルから醸し出されるムードがレースシムのコックピットに似合うのでしょうか?

こればかりは実際に完成させてみないことには分かりません。

でも、せっかく木製にチャレンジするのですから、「コックピットは金属製」という常識を覆すような木工製品ならではの構造の美しさにもこだわります。

 

費用面の条件

今回は手探りの設計で高い完成度を目指すので、寸法・構造の変更などによる作り直しがあったり、買っても出番がない材料や工具などの無駄が生じることになりそうです。

しかし ”こだわりDIY” で自分の経験や知識の全てを賭けて挑戦するプロジェクトには、お金に代えがたい価値があります。

また、余材や出番のなかった工具はDIY資材となっていつか出番があれば役立つことになりますから、長い目で見れば無駄を減らすことができます。

 

ただしアルミフレームの市販コックピットよりは少ない出費で完成させたいですから、全ての支出は記録しておいて完成後に改めて検証してみたいと思います。

 

木製プロジェクト、ついにグリーンシグナル!

構想の実現性にも見通しが立ってきたので。というか、どうしても作りたい気持ちを抑えきれなくなったので、^^ゞ、この時点で製作を決断しました。

 

予期せぬ難関で作業が行き詰まることがあっても、熱いDIY魂で「完成」という名のチェッカーフラッグを目指すことにします。(^^)