自分の走りの限界を感じる
停滞期の練習で一定の成果は見られましたが、7分3秒台以降はベスト更新する気配が感じられなくなりました。
自分の感覚としては、もう少しタイムを伸ばせそうな気がするのですが、手応えの良い走りをしてもタイヤのグリップが不足してそれ以上のペースで走ることができないのです。
こう書くとまるでタイヤの限界まで使い切っているみたいですが、7分を切る前にそんなことが起こるなんて、上位グループのタイムから考えてもあり得ないことです。
このことからもグリップの不足に陥っているのは私の走り方に問題があるのは明らかで、原因を探りながら走行を繰り返していると、ターン初期にブレーキに頼りすぎていることが原因であることに気が付き始めました。
具体的には、
・ターンが始まっても引き続きブレーキで速度を落とすことによって曲がりこみを稼ごうとしている。
・ターン進入速度を上げると強い減速で前輪のグリップに余裕がなくなり、前輪に舵角をつけても強アンダーになるか、スリップでコントロールできなくなる。
・コーナリング中、減速Gでリア荷重が減った状態だと、リアが振りやすくて小さなターンで重宝するから、ついついそれに頼ってしまう。
要するに、前輪のグリップの多くを減速に使ってしまい、曲がるためのグリップが足りないためにコーナリング速度が上げられないということです。
前輪のグリップ配分から走りを見直す
以前の練習で前輪のグリップについて考えた時は、減速で生じている黄色の範囲が下図のようにターン前半を広く占めるイメージでした。
確かにこのイメージだと、ターン前半にブレーキの力を弱めるにつれて曲がるためのグリップが増えますからブレーキを抜きながら曲げ込む手応えとなって私には曲がりやすく感じられたのです。
しかし、タイヤのコーナリング性能は加減速のないパーシャル時に最大発揮されるのだとすれば、緑の面積をできるだけ広くするべきですから、無駄に広い黄色の範囲をできるだけ減らして、その分を緑に置き換えるのが、コーナリングの理に適っているのではないかと考えたわけです。
と、言葉にすると簡単ですが、いざやってみようとすると、コーナー進入時にスッ、とブレーキをリリースするのと同時にハンドルをグイと切り込む操作にすごく違和感があり、タイムはガタ落ち、完走すらなかなかできませんでした。
ただ、そんな状態の中、減速Gを前輪から抜く時にサッ、とハンドルを切って横Gにすり替えることができると、ターン初期からギュンと曲がり込む手応えを感じる時がありました。
それまでのブレーキをジワーと抜くにつれ徐々に曲がりが強まるのとは違い、「タイヤのコーナリング性能ってこういう感じなのか!」という新鮮な手応えです。
小脳のコーナリングスキルを効率的にアップデート
減速しながらのターン(減速曲がり)は、コースアウトを連発していた頃の私の能力には最適のコーナリングテクニックだったようです。そしてこのテクニックを足掛かりに次々と練習テーマを見つけては対策を行うことで、短期間に7分5秒までタイムアップすることができました。
しかしタイヤのグリップの多くを減速が占めてしまうテクニックでは、6分台を目前にして限界がきたのだろうと思います。
私の小脳は減速曲がりの操作をせっせち自動化してきたわけですが、突然の方針変更で「違う曲がり方に取り組め!」となると、必然的に身体に染み付いた癖が邪魔をして走りが混乱してしまいます。
この混乱期に迷いや焦りなどのメンタル要素が生じると、スランプという深刻な昏迷状態に陥ってしまう危険性があるので、覚悟を決めて明確で合理的な方針を貫くつ必要があります。
このことを念頭に、小脳のアップデート作業をスムーズに完了させるため、以下の点に気をつけました。
・練習以外の時も、減速曲がりで走ることは一切やめる。
・新しいテクニックのメリットを理屈でしっかり理解し、操作とクルマの反応を明確にイメージする。
・練習中に新しいテクニックのメリットを感じたら、その感覚をしっかり頭に刻み、走る度にその感覚を再現する。
・走りが混乱している間は、良いイメージを味わえるペースで走る。
予想通り練習を開始した当初は、混乱の極みといった感じで手も足も思うように動かず7分30秒までタイムが急落。
本当にこんなことして大丈夫だろうか?と不安を感じるほどひどい走りになりましたが、これも想定済みですから、結果を信じて新しいイメージに集中します。
その後も練習を重ね、コーナー進入でブレーキリリースとハンドルを切り込むタイミングのコツを掴みはじめると、ターン中の速度がこれまで経験したことのない速さになり、曲がりきれないミスが増えました。
つまりブレーキに頼るのが減った分だけ明らかにターンの速度が上がったわけで、ターン開始タイミングを早めるなど、様々な調整が必要でした。
やがて減速曲がりの癖がすっかり消え、新しい操作に慣れてくると徐々にタイムが上がり始め、「おお、自己ベストに近づいてきたじゃないか!」と思ったら、コンマ2秒やコンマ3秒などの僅差でじわじわと自己ベストを更新しだしたではないですか。
これに気を良くして気合を入れるとついに7分2秒をマーク。
しかも、完璧な走りをしているわけではなくて、いろんなミスや新たな気付き・感覚が入り混じった荒削りな走りですから、まだまだ伸び代がありそうです。
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混乱を覚悟して技術改造に取り組んだら、限界をさらに引き上げることができました。
7分3秒→7分1秒になりました。
より優れたパフォーマンスを引き出すためには、今の自分にとって必要なスキルでも、それをあえて手放し、さらに高い次元のスキルへとアップデートすることで、自己の限界を高めることが可能になることが体験できました。